東京家庭裁判所 昭和44年(少)7699号 決定 1969年6月26日
少年 G・S(昭三〇・八・二七生)
主文
この事件を横浜市児童相談所長に送致する。
理由
本件は、少年が、当初、警察において、氏名年齢を詐称し、昭和二七年一二月一六日生と称していたため、警察においては、一七歳の虞犯少年として、直接、家庭裁判所に送致してきたものである。
調査の結果によれば、少年の生年月日は、昭和三〇年八月二七日生で、一三歳の児童であり、昭和四三年一〇月九日横浜市児童相談所から横浜家庭学園に入所し、同園において教護を受けていたが、本年五月八日同園を無断でとび出し、本件虞犯事件送致事由の内容をなす徒遊放浪の生活をつづけ、本年六月二一日本件送致警察の補導下に入つたものである。
当裁判所は、横浜家庭学園教護立会の下に審理を進めたところ、少年は、同学園に帰りたくない、横浜市児童相談所に戻してほしい、と述べている。
そこで考えてみると、本件は、実質的には、正に、横浜市児童相談所に送致することが適当と思料される事案であるが、法律論としては、本件の如く、一四歳未満の者であつて少年法第三条第二項の送致手続きを欠いている場合には、家庭裁判所には審判権がないのであるから少年法第一九条第一項によつて審判不開始決定をすべきであるとする説も成立つであろう。しかし、そのような説によつては、本件処遇の実質的妥当性を期することができないのである。たとえ、一四歳未満の者であつて、少年法第三条第二項の送致手続を欠いている場合であつても、本件の如く、一たん、家庭裁判所の審理下に入つている以上は、家庭裁判所が相当と認めるときは、少年法第一八条第一項により事件を児童相談所長に送致することができるものと解することが、少年法と児童福祉法との円滑なる運用をはかり、児童福祉を全うする所以のものであると判断する。
よつて、本件について、少年法第一八条第一項を適用できるものと解し、同条により主文のとおり決定する。
(裁判官 市村光一)